〇プラスチック製品の高機能化が進む中で、
【樹脂に別の材料を加えて機能を向上させる】
樹脂コンパウンドの技術は、様々な製品開発に
欠かせない技術となっています。
例えば
- 強度を高くしたい
- 剛性を向上させたい
- 耐熱性を高めたい
- 難燃性を付与したい
- 導電性、熱伝導性を持たせたい
- 軽量化したい
- コストを下げたい
- 外観や成形性を改善したい
といった要求に対し、ベースとなる樹脂に無機フィラー
やガラス繊維、カーボン材料、難燃剤、相溶化剤などを
配合する事で、目的に合わせた材料を設計出来ます。
しかし、【材料を混ぜれば性能が上がる】というほど
単純ではありません。
同じ配合でも、混練温度・スクリュー構成・回転数
・吐出量・滞留時間によって、分散状態や樹脂の劣化
成形性が大きく変化します。
そこで今回は、樹脂コンパウンドを初めて扱う開発担当者
にもわかりやすいように、樹脂コンパウンドの基礎から
配合・二軸混練・評価までを解説します。
■樹脂コンパウンドとは?
〇樹脂コンパウンドとは、ベースとなる樹脂に
様々な添加剤やフィラーなどを混合・混練して
目的とする性能を持った樹脂材料を作る事です。
例えば、
【ベース樹脂+添加剤量=目的に合わせたコンパウンド材料】
という考え方です。
代表的な組み合わせとして、
| ベース樹脂: | 添加材料: | 目的: |
| PP | ガラス繊維 | 強度・剛性向上 |
| PA | ガラス繊維 | 強度・耐熱性向上 |
| ABS | タルク | 剛性・寸法安定性 |
| PC | 難燃剤 | 難燃性付与 |
| PE | CaCO₃ | 剛性・コスト調整 |
| PPS | ガラス繊維 | 高強度・耐熱性 |
| 樹脂 | カーボンブラック | 導電性・着色 |
| 樹脂 | BN | 熱伝導製向上 |
等があります。
重要なのは、単純に混ぜるのではなく、
【どの性能を、どの程度向上させたいのか】を明確にしたうえで
材料設計する事です。
■なぜ樹脂コンパウンドが必要なのか?
〇樹脂単体では、製品に求められるすべての性能を
満たせていない場合があります。
例えば、
【軽いけど強度が足りない】
【強度はあるけど耐熱性が足りない】
【耐熱性は高いけど加工性が悪い】
といった問題です。
そこで複数の材料を組み合わせる事で、単一の樹脂では
得られなかった性能を実現します。
つまり樹脂コンパウンドは、
【樹脂の弱点を補い、必要な性能を付与する技術】
とも言えます。
■樹脂コンパウンドで使用される主な材料
①ベース樹脂
〇まず重要なのがベースとなる樹脂です。
代表的なものとして、
- PE(ポリエチレン)
- PP(ポリプロピレン)
- PS(ポリスチレン)
- ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)
- PC(ポリカーボネート)
- POM(ポリオキシメチレン)
- PET(ポリエチレンテレフタレート)
- PBT(ポリブチレンテレフタレート)
- PPS(ポリフェニレンサルファイド)
等があります。
樹脂によって、
- 耐熱性
- 粘度
- 吸湿性
- 分解温度
- 溶融温度
- 成形性
- 他材料との相溶性
等が異なります。
その為、同じ混練条件を全ての樹脂に適応する事は
できません。
②フィラー
〇樹脂コンパウンドでは、様々なフィラーが使用されます。
代表的なものが、
- タルク
- 炭酸カルシウム
- シリカ
- マイカ
- ガラス繊維
- 炭素繊維
- カーボンブラック
- 窒化ホウ素
- 金属粉
等です。
フィラーを添加する事で
強度・剛性・耐熱性・寸法安定性・導電性・熱伝導性・コスト
等を調整できます。
ただし、フィラーは【入れれば入れるほど良い】というものでは
ありません。
添加量が増えると、
- 粘度上昇
- 流動性低下
- 分散不良
- 凝集
- 成形性低下
- 外観悪化
- 衝撃強度低下
等が、発生する場合があります。
■樹脂コンパウンドで重要な【分散】と【分布】
〇樹脂コンパウンドを理解する上で、非常に重要なのが
分散と分布です。
①分布
〇材料が全体に均一に行き渡っているか。
②分散
〇凝集しているりゅしを細かくほぐし、気に津ナ状態に
出来ているか。
例えば、カーボンブラックやシリカなどが大きな
塊になっていると、
- 外観不良
- 強度低下
- 導電性のバラつき
- フィルム欠陥
- 成形不良
等に繋がります。
その為、【配合比が正しい】=【良いコンパウンド】
ではありません。
最終的には、材料がどのような状態で樹脂中に
存在しているかが重要です。
■二軸混練機によるコンパウンド
〇樹脂コンパウンドでは、二軸混練押出機が多く使用されます。
二軸混練機では、2本のスクリューを回転させながら
樹脂を溶融・混練し、添加剤を樹脂中へ分散させます。
一般的な工程は、
【原料投入→溶融→混練→分散→脱気→押出→冷却→ペレット化】
という流れになります。
二軸混練機の大きな特徴は、スクリュー構成を変更する事で
【どこで溶かすか】
【どこで添加するか】
【どこで強く混練するか】
【どこで脱気するか】
等を設計できる事です。
■混練条件で重要なポイント
〇樹脂コンパウンドの試作では、主に以下の条件を検討します。
①シリンダー温度
〇温度が低すぎると、
- 樹脂が十分に溶融しない
- 混練不良
- トルク上昇
- 圧力上昇
等に繋がります。
一方温度が高すぎると、
- 樹脂の熱劣化
- 添加剤の分解
- 色調変化
- ガス発生
等の問題が発生する可能性があります。
②スクリュー回転数
〇回転数を上げると、一般的には混練能力を高めやすくなります。
しかし、回転数を上げれば必ずしも良くなるわけではありません。
せん断発熱や樹脂への負担が大きくなり、材料によっては
劣化に繋がる場合があります。
③吐出量
〇吐出量が変わると、
- 充満率
- 滞留時間
- 混練状態
- トルク
- 圧力
等が変化します。
その為、回転数だけではなく吐出量とのバランスを
見る事が重要です。
④スクリュー構成
〇二軸混練では非常に重要なポイントです。
例えば、
- ニーディングディスク
- リバースエレメント
- 混練エレメント
- 搬送エレメント
等を組み合わせて、混練強度や充満状態を調整します。
材料によって適切なスクリュー構成は異なります。
特に、ガラス繊維や炭素繊維 等、繊維長を維持したい
材料では、過度なせん断を避ける設計も重要になります。
■樹脂と添加材料の【相溶性】も重要
〇異なる材料を混ぜる場合、相溶性が問題になる事が
あります。
例えば、
【樹脂Aと樹脂Bを混ぜたいけれど、期待した性能が出ない】
というケースです。
これは、単純な混練不足だけでなく、材料同士の相性が悪い
可能性があります。
このような場合には、
【相溶化剤(コンパチビライザー)】
を使用する事があります。
総溶加剤によっては材料同士の界面状態を改善し物性や分散性を
向上させられる場合があります。
■水分・揮発分への注意
〇樹脂コンパウンドでは、原料中の水分や揮発分も
重要な管理項目です。
特に、
- PA
- PET
- PBT
- PC
等の吸湿しやすい樹脂では、乾燥条件が重要になります。
水分が残った状態で高温混錬すると、
【加水分解や→分子量低下→強度低下】
に繋がる可能性があります。
また、添加剤やフィラーから水分や揮発成分が発生する事も
ありますので、必要に応じてベントや真空脱気の検討が必要です。
■樹脂コンパウンドで発生しやすいトラブル
〇代表的なトラブルとして、
①混錬不良
〇材料が十分に分散しない。
②凝集
〇フィラーなどがダマになって残る。
③トルク上昇
〇材料の粘度上昇や供給状態によって負荷が高くなる。
④圧力上昇
〇ダイ部分などで流動抵抗が増加する。
⑤樹脂劣化
〇温度・せん断・滞留時間などによって、分子量低下などが
発生する。
⑥ガス・ボイド
〇水分や揮発成分が残る
⑦色ムラ
〇顔料やカーボンブラック等の分散不良
重要なのは、不良現象だけを見るのではなく
【なぜ発生したのか】を肯定条件まで遡って考える事です。
■コンパウンド後の評価
〇樹脂コンパウンドは、作って終わりではありません。
目的に応じて評価を行います。
代表的な評価として、
- 引張強度
- 曲げ強度
- 曲げ弾性率
- 衝撃強度
- MFR
- 熱変形温度
- 融点
- ガラス転移温度
- 熱重量分析
- DSC
- 粒度、分散状態
- 灰分
- 吸水率
- 電気抵抗
- 熱伝導率
等があります。
例えば、【強度を上げたい】という目的でコンパウンドした場合
単純に強度だけを見るのではなく、
【流動性・外観・成型性・耐熱性】なども含めて総合的に評価する
事が重要です。
■開発では【小さく試して、条件を絞り込む】
〇新しいコンパウンド材料を開発する時、最初から
完璧な条件を狙う必要はありません。
例えば、
①材料選定
↓
②配合比を検討
↓
③小スケールで試作
↓
④混練状態を確認
↓
⑤物性評価
↓
⑥条件修正
↓
⑦再試作
というサイクルを回します。
特に開発初期では、
【どの条件が良いのか】よりも【どの条件で何が変化するか】
を把握する事が重要です。
試作データを蓄積する事で、最終的な量産条件にも繋がっていきます。
■樹脂コンパウンド開発で重要な考え方
〇樹脂コンパウンドは、
【材料×配合×混練条件×評価】
の4つをセットで考える事が重要です。
例えば、物性が悪かった場合でも、
【材料が悪い】とすぐに判断するのではなく
- 配合は適切か?
- 分散出来ているか?
- 温度は適切か?
- 回転数は高すぎないか?
- 滞留時間は長すぎないか?
- 水分は残っていないか?
- 相溶性に問題はないか?
- スクリュー構成は適切か?
等、複数の視点から原因を分析する必要があります。
この、【材料と設備条件をセットで考える視点】が
コンパウンド開発では非常に重要です。
■まとめ
〇樹脂コンパウンドでは、単純に複数の材料を混ぜ合わせる
技術ではありません。
【どの樹脂に、何を、どれだけ配合し、どのような条件で混練するのか】
を設計する事で、目的とする性能を引き出す技術です。
特に開発担当者が押さえておきたいポイントは、
- ベース樹脂の特性
- 添加材料、フィラーの特性
- 配合比
- 分散、分布
- 相溶性
- 混練温度
- スクリュー回転数
- 吐出量
- スクリュー構成
- 水分、揮発分
- 樹脂の熱、せん断劣化
- コンパウンド後の物性評価
そして、コンパウンド開発で最も大切なのは、
【材料を混ぜる事】ではなく、
【目的とする性能を実現する為に、材料と工程を設計する事】
です。
試作と評価を繰り返しながら条件を最適化していくことで
より高性能で安定したコンパウンド材料の開発に繋がります。
樹脂コンパウンドは、材料の可能性を引き出す為の【設計技術】です。
開発初期の段階で適切な材料選定や混練条件を検討する事が
最終的な製品性能や量産性を大きく左右します。
