フィルム成形において、【フィルムの強度が足りない】
【引っ張るとすぐに破れる】【使用中に裂けてしまう】
といった問題は、非常に重要な改善課題です。
特に食品包装、工業用フィルム、農業用フィルム
ラミネート基材 等では、フィルムの引張強度・耐衝撃性・伸び
等が製品性能を大きく左右します。
しかし、フィルムの強度は単純に【強い樹脂を使えば高くなる】
というものではありません。
使用する樹脂の種類や分子量、添加剤、配合比だけでなく、
- 樹脂温度
- 冷却条件
- ドロー比
- 引取速度
- フィルム厚み
- 配向状態
- 結晶化状態
- ダイからの吐出状態
等、材料。成形条件・冷却条件のバランスによって
大きく変化します。
本記事では、フィルム成形時のフィルム強度を高める
為の基本的な考え方と、具体的な改善ポイントについて解説します。
■まず【フィルム強度】の種類を理解する
〇一口に【強度】と言っても、フィルムには様々な
評価項目があります。
代表的なものとして、以下があります。
①引張強度
〇フィルムを引っ張った時に、どれだけの力に耐えれるか
を示します。
包装材や工業用フィルムでは非常に重要な指標です。
②破断伸度
〇フィルムが破断するまでに、どれだけ伸びるかを示します。
強度が高くても伸びが極端に小さい場合、実際の使用環境では
割れや破れが発生する事があります。
③引裂強度
〇フィルムに切れ目が入った状態から、どれだけ裂けにくいか
を示します。
包装用フィルムでは特に重要です。
④耐衝撃性
〇落下や突起物などから瞬間的な衝撃を受けた時の破れにくさです。
【強いフィルム=引張強度が高い】だけではありません。
用途に応じて、引張強度、伸び、引裂強度、耐衝撃性 等を
総合的に考える必要があります。
■フィルム強度を高める基本は【分子配向】
〇フィルム成形では、樹脂がダイから吐出された後、引き取られる事で
分子鎖が一定方向に配向します。
この分支配移行がフィルム強度に大きく影響します。
例えば、引取方向に分子鎖が揃えば、一般的に引取方向の
引張強度は向上しやすくなります。
一方で、配向が強くなりすぎると
- MD方向だけ強い
- TD報告が弱くなる
- フィルムが裂けやすくなる
- 収縮が大きくなる
- カールが発生する
といった問題に繋がる場合があります。
したがって重要なのは、
【ただ強く引っ張る】のではなく、目的に合った分子配向を作る事です。
■引取速度を調整する
〇フィルム強度を調整する上で、引取速度は非常に重要な
成形条件です。
一般的には、引取速度を上げる事で樹脂に伸長変形が加わり
分子配向が進みます。
その結果、引取方向の強度が向上する場合があります。
ただし、引取速度を上げれば上げるほど良いわけではありません。
適度な引取によって、
- 厚みムラ
- フィルム収縮
- 配向異方向
- 破断
- 外観不良
等が、発生する可能性があります。
その為、引取速度を段階的に変更して、強度と外観の
バランスを確認する事が重要です。
■冷却条件を最適化する
〇フィルムの強度を考えるうえで、冷却条件も非常に重要です。
冷却が速すぎる場合と遅すぎる場合では、樹脂の結晶化状態や
分子配向状態が変化します。
特に結晶性樹脂では
- 冷却速度
- 冷却温度
- 冷却位置
- 冷却ロールとの接触状態
等によって結晶化状態が変わります。
例えば、PEやPP等の結晶性樹脂では、冷却条件を
変更する事で、結晶構造やフィルム物性が変化する可能性があります。
したがって、樹脂温度だけでなく【どのように冷やすか】まで
含めて条件設計する事が重要です。
■樹脂温度を適正化する
〇樹脂温度もフィルム強度に大きく影響します。
温度が低すぎる場合、
- 溶融不足
- 分散不良
- ダイ内での流動不均一
- ゲルや未溶融物
- 表面不良
等に繋がる可能性があります。
一方で、温度が高すぎる場合には
- 樹脂の熱劣化
- 分子量低下
- ガス発生
- 黄変
- 強度低下
等が発生する可能性があります。
特に高分子材料では、熱履歴によって分子量が変化すると
フィルムの強度にも影響します。
その為、【成形できる温度】ではなく【物性を維持できる温度】
を意識する事が重要です。
■樹脂の分子量を確認する
〇フィルム強度を高めたい場合、使用する樹脂そのものの
分子量も重要な要素です。
一般的に、分子量が高い樹脂は分子鎖同士の絡み合いが
増える為、強度や耐衝撃性の向上に繋がる場合があります。
ただし、高分子量化すると
- 溶融粘度が高くなる
- 成形性が低下する
- 吐出が不安定になる
- 必要な加工温度が高くなる
等のデメリットもあります。
つまり、【高分子量=必ず高強度】ではなく
【必要な強度】と【成形性】のバランスが重要になります。
■樹脂のブレンドによって強度を改善する
〇単一樹脂では目的の物性が得られない場合、複数の樹脂を
ブレンドする方法があります。
例えば、
- PE+LLDPE
- LDPE+LLDPE
- PP+エラストマー
- PE+エラストマー
等、異なる物性を持つ樹脂を組み合わせる事で、強度と柔軟性
等のバランスを調整できます。
例えば、硬くて強い樹脂に柔軟性のある材料を組み合わせる事で
単純な引張強度だけではなく、耐衝撃性や破れにくさを改善できる
場合があります。
ただし異なる樹脂を混ぜる場合は相溶性にも注意が必要です。
相溶性が悪い場合、界面が弱点となり、逆にフィルム強度が
低下する場合があります。
■添加剤・フィラーの配合を見直す
〇フィラーや添加剤を使用している場合、その種類や添加量
もフィルム強度に大きく影響します。
例えば、
- 炭酸カルシウム
- タルク
- シリカ
- ガラス繊維
- 無機フィラー
等を添加すると、剛性やその他の物性を調整できます。
しかし、フィラーを増やせば必ず強度が上がるわけではありません。
フィラーの分散状態が悪かったり、樹脂との界面接着が弱かったり
すると、【フィラーと樹脂の界面が破壊の起点】になる事があります。
添加量だけなく、分散性・粒径・表面処理・相溶化剤
等も含めて検討する必要があります。
■フィルム厚みを均一にする
〇意外に重要なのが、フィルムの厚みムラです。
例えば平均厚みが50μmのフィルムでも、一部に40μmの
薄い部分が存在すれば、その部分が破断の起点になる
可能性があります。
その為、フィルム強度を高めるには、
【平均厚みを厚くするだけでなく、厚みを均一にする】
事が重要です。
厚みムラの原因としては、
- ダイギャップ
- ダイ温度
- 樹脂圧力
- 吐出量
- 引取速度
- 冷却状態
- 樹脂の流動性
等が考えられます。
■フィルム中の異物・ゲルを減らす
〇フィルムの強度を低下させる大きな原因の一つが
ゲルや異物です。
フィルム中に異物やゲルが存在すると、そこが応力集中部となり
フィルムが破断する可能性があります。
特に薄膜では、わずかな異物でも影響が大きくなります。
対策としては、
- 原料の乾燥・保管管理
- スクリーンメッシュの適正化
- 押出機内部の清掃
- 滞留部の確認
- 樹脂の熱劣化防止
- 原料ロット管理
等が重要です。
【強い材料を使う】だけでなく、【弱点を作らない】
事もフィルム強度向上には重要です。
■MD方向とTD方向の強度バランスを見る
〇フィルム評価では、MD方向とTD方向を分けて
評価する事が重要です。
例えば、
- MD強度:高い
- TD強度:低い
というフィルムの場合、強度そのものが低いというより
配向バランスが悪い可能性があります。
特にフィルムを実際の製品として使用する場合には、
- MD引張強度
- TD引張強度
- MD伸度
- TD伸度
- MD引裂強度
- TD引裂強度
等を比較する事で、フィルムの特性をより正確に把握できます。
■フィルム強度を高める為の条件検討方法
〇実際にフィルム成形条件を改善する場合、いきなり複数の
条件を変更するのではなく、一つずつ条件を変えて評価
する事がおすすめです。
例えば、
STEP①
〇基準条件を決める
STEP②
〇引取速度を変更する
STEP③
〇冷却条件を変更する
STEP④
〇樹脂温度を変更する
STEP⑤
〇必要に応じて樹脂配合を変更する
STEP⑥
〇MD/TD方向の引張強度、伸度、引裂強度などを比較する
このように条件を整理する事で、【何を変えた事で強度が変化したのか】
を把握しやすくなります。
■フィルム強度向上で重要なのは【材料×成形条件】
〇フィルムの強度を決める要因は、一つではありません。
大きく分けると、
- 材料設計
- 混練、分散
- 押出条件
- ダイ条件
- 延伸、引取条件
- 冷却条件
- 厚み管理
の組み合わせです。
例えば、材料自体の強度が高くても、成形時に熱劣化して
しまえば、本来の性能を発揮できません。
逆に、材料の性能が同じでも、分子配向や冷却条件を最適化
する事で、フィルム物性が改善する場合があります。
つまり、フィルム成形において重要なのは、
【材料の性能を最大限に引き出す成形条件を見つける事】です。
■まとめ
〇フィルム成形時の強度を高める為には、単純に
【強い樹脂を使用する】だけでは十分ではありません。
特に重要なのは、
- 樹脂の種類、分子量を見直す
- 樹脂温度を最適化する
- 引取速度を調整する
- 分子配向をコントロールする
- 冷却条件wの最適化する
- フィルム厚みを均一にする
- フィラーや添加剤の分散性を改善する
- ゲル、異物を減らす
- MD方向、TD方向の強度バランスを確認する
といった複数の要素を総合的に検討する事です。
特にフィルム強度の改善では、
【材料を変える前に、成形条件を見直す】事で改善できる
ケースもあります。
フィルムの強度は、材料・温度・流動・延伸・冷却が
連動して決まります。
だからこそ、フィルム成形では単一の条件だけを見るのではなく
材料と成形条件を一体として考える事が重要です。
