フィルム瀬敬において、【フィルムが片側に反ってしまう】
【ロール状に巻き取ると端部が浮いてします】
【冷却後にフィルムがカールしてしまう】
といった問題は、比較的よく発生する成形不良の一つです。
フィルムのカールは、単純に【温度が高い】【冷却が悪い】
といった一つの原因だけで発生するとは限りません。
樹脂の種類や結晶性、フィルムの厚み、冷却条件、Tダイからの
吐出状態、延伸、巻取り条件など、複数の要因が重なって発生する
ケースが多いのが特徴です。
本記事では、フィルム成形時に発生するカールについて
- なぜカールが発生するのか
- 主な原因は何なのか
- どのように原因を切り分けるのか
- 具体的にどのような改善対策があるのか
について、フィルム成形の現場で役立つように詳しく解説します。
■フィルム成形時のカールとは?
〇フィルムのカールとは、平らに成形されたはずのフィルムが
幅方向または厚み方向に曲がってしまう現象です。
例えば、
- フィルムの端部が上向きに反る
- フィルムの中央部が盛り上がる
- 一方向に巻き込むように曲がる
- 巻取り後にフィルムを広げても平坦にならない
といった状態がカールに該当します。
カーㇽが発生すると、後工程での加工性が悪化します。
例えば、
印刷→ラミネート→スリット→袋加工→自動包装
等の工程では、フィルムが平坦でない事で、
- 位置ズレ
- 搬送不良
- シワ
- 密着不良
- 加工機での蛇行
- フィルムの浮き
等に繋がる可能性があります。
■フィルムがカールする基本的なメカニズム
〇カールの大きな原因は、フィルム内部に残った
収縮差、応力差です。
例えば、フィルムの表面と裏面で冷却状態が異なると
それぞれの収縮量に差が生じます。
イメージとしては、
表面:収縮差が大きい
裏面:収縮差が小さい
となった場合、フィルム内部に収縮差が生じます。
この収縮差によってフィルムが曲がり、カールとして現れます。
つまり、
カール=フィルム内部の収縮差・応力差として現れたもの
と考えると、原因を整理しやすくなります。
■フィルム成形時のカールの主な原因
①冷却条件の表裏差
〇カールの原因としてまず確認したいのが
冷却状態の左右差・表裏差です。
Tダイから吐出されたフィルムは、高温状態から
冷却されながら固化していきます。
この時、
- 冷却ロールとの接触状態
- エアーの当たり方
- 冷却風量
- 冷却水温
- 冷却ロールの温度
- フィルムとロールの密着状態
等に差があると、フィルムの収縮状態にも差が生じます。
その結果、カールに繋がる事があります。
改善対策:
- 冷却条件を安定させる
- 冷却風量を左右均一にする
- 冷却ロール温度を安定させる
- フィルムと冷却ロールの密着状態を確認する
といった対策を行います。
②フィルムの厚みムラ
〇厚みムラもカールの重要な原因です。
例えば、幅方向で、
左側:厚い
中央:標準
右側:薄い
という状態になっていると、各部分での冷却・収縮挙動が
変わります。
特に結晶性樹脂では、厚みの違いによって冷却速度や
結晶化状態にも差が生じる為、カールに繋がる場合があります。
その為、カールが発生した場合には、厚みのプロファイルの
確認も重要です。
改善対策:
- 樹脂温度の安定化
- Tダイリップ調整
- 押出量の安定化
- スクリュー回転数の安定化
- ダイ内の流動状態確認
等によって厚みムラを改善します。
③樹脂温度・冷却温度の不適切
〇樹脂温度が適切でない場合も、フィルムの収縮状態に
影響します。
樹脂温度が高すぎると、フィルムが冷却されるまでの
時間が長くなり、成形条件によっては内部応力が
残りやすくなる場合があります。
反対に、冷却が急激すぎる事で、フィルム内部と
表面で固化状態に差が生じるケースもあります。
重要なのは、
【高ければ良い】【低ければ良い】ではなく
樹脂に適した温度履歴を作る事!です。
改善対策:
- シリンダー温度
- ダイ温度
- 樹脂温度
- 冷却ロール温度
- 冷却風温度
等を個別に確認し、温度条件を一つずつ調整します。
④延伸・引き取り条件による内部応力
〇フィルムを引き取る際に強い張力がかかると、フィルム内部に
応力が残る場合があります。
特に、
押出→冷却→ニップ→引き取り→巻取り
という工程では、それぞれの速度差が重要です。
例えば、引き取る速度が速すぎるとフィルムに過度な張力が
かかる可能性があります。
その状態で冷却・固化すると、内部に応力が残り後から
カールとして現れる事があります。
改善対策:
- 引き取り速度を調整する
- ニップロールの圧力を確認する
- ライン速度を安定させる
- 過度なフィルム張力を避ける
といった対応が有効です。
⑤巻き取り張力が強すぎる
〇成形時には問題が無くても、巻き取り後に
カールが発生する場合があります。
この場合は巻き取り条件を疑います。
巻き取り張力が強すぎると、フィルムがロール状に
強く拘束されます。
その状態で時間が経過すると、フィルムに【巻き癖】
が残り、巻き出した後もカールする事があります。
改善対策:
- 巻き取り張力を下げる
- 巻き取り圧力を調整する
- 巻き取り速度を確認する
- ロール硬さを確認する
等が有効です。
特に、【成形直後は平坦だが、巻き取り後にカールする】
のであれば、巻き取り条件を優先的に確認すると良い!
⑥樹脂の結晶化による収縮
〇PPやHDPE等の結晶性樹脂では、結晶化状態が
カールに影響する場合があります。
樹脂が冷却される際に結晶化が進行すると
体積収縮が発生します。
冷却速度や温度履歴が均一でなければ、フィルムの場所によって
結晶化状態が変わり、収縮差が発生する可能性があります。
その為結晶性樹脂では、
樹脂温度→ダイ温度→冷却条件→引取条件
まで一連の温度履歴として考える事が重要です。
⑦非結晶性樹脂でもカールは発生する
〇カールは結晶性樹脂だけの問題ではありません。
PE、PP等の結晶性樹脂だけではなく、
非晶性・非結晶性の樹脂でも、
- 冷却ムラ
- 延伸応力
- 残留応力
- 厚みムラ
- 巻き取り張力
等によってカールが発生する可能性があります。
したがって、
【結晶性樹脂だからカールする】ではなく、
【フィルム内の収縮差・応力差があるからカールする】
と考える事が重要です。
⑧Tダイからの吐出状態の不均一
〇Tダイ内部の流動状態が不均一な場合も、カールに
繋がる可能性があります。
例えば、
- ダイ内の圧力差
- 樹脂温度の偏り
- ダイリップの調整不良
- 滞留樹脂
- 異物
- ダイギャップの不均一
等です。
これらによって幅方向の吐出状態が変化すると
厚みや収縮挙動にも影響します。
その為、カール対策ではTダイそのものの状態を
確認する事も重要です。
■カールが発生した時の原因切り分け方法
〇カール対策で重要なのは、やみくもに条件を
変更しない事です。
まず、【いつカールが発生しているのか】を
確認します。
成形直後からカールする
〇疑うポイント:
- 冷却城ケ円
- 樹脂温度
- Tダイ
- 厚みムラ
- 引き取り条件
- 結晶化状態
巻き取り後にカールする
〇疑うポイント:
- 巻き取り張力
- 巻き取り圧力
- ロール硬さ
- 保管条件
- 巻き癖
時間が経つとカールする
〇疑うポイント:
- 残留応力
- 結晶化の進行
- 温度履歴
- 吸湿
- 保管温度
というふうに、カールが発生するタイミングから
原因を絞り込むと効率的です。
■フィルムのカール改善で確認したい項目
〇現場では、次の項目をチェックすると原因を
見つけやすくなります。
| 確認項目 | チェックポイント |
| ・樹脂 | 結晶性・非晶性・グレード |
| ・樹脂温度 | 実際の樹脂温度 |
| ・ダイ温度 | 幅方向の温度差 |
| ・厚み | 幅方向の厚みプロファイル |
| ・冷却 | 冷却速度・冷却ムラ |
| ・引き取り速度 | 過度な延伸が無いか |
| ・ニップ | 圧力・接触状態 |
| ・張力 | フィルムに過度な張力が無いか |
| ・巻き取り | 巻き取り張力・ロール硬さ |
| ・結晶化 | 結晶化状態・冷却履歴 |
| ・保管 | 温度・時間・保管状態 |
■カール対策は【温度・厚み・張力】の3つから考える
〇フィルムのカールを改善する時、まずは押さえておきたいのが、
①温度
②厚み
③張力
の3つです。
温度が不均一なら収縮差が生じ、厚みが不均一なら冷却・結晶化状態
に差が生じ、張力が強すぎれば内部応力が残ります。
つまり、
【フィルムを均一に作り、均一に冷却し、余計な応力を与えない】
事がカール改善の基本になります。
■まとめ
〇フィルム成形時のカールは、単純な一つの条件だけで
発生するのではなく、フィルム内部の収縮差や残留応力が
大きく関係しています。
主な原因として、
- 冷却条件の不均一
- フィルムの厚みムラ
- 樹脂温度、冷却温度
- 引き取り条件
- 延伸による残留応力
- 巻き取り張力
- 結晶化状態
- Tからの吐出状態
等が挙げられます。
カールが発生した場合はまず、
【成形直後から発生しているのか】
【巻き取り後に発生しているのか】
【時間が経ってから発生するのか】
を確認する事が重要です。
その上で、温度・厚み・冷却・張力・巻き取り条件を
一つずつ確認する事で、原因を効率的に切り分ける事が
出来ます。
フィルム成形におけるカール対策では、単に一つの条件を
するのではなく、【樹脂がダイから出て、冷却され、引き取られ
、巻き取られるまでの温度と応力の履歴】を総烏合的に
見る事が重要です。
フィルムを、【平らにする】のではなく、
【カールしにくい状態で成形する】事が
根本的な改善に繋がります。
