フィルム成形において、【フィルムの厚みが均一にならない】
【幅方向で厚みが違う】【長手方向で厚みが変動する】
と言った厚みムラは、非常に多いトラブルの一つです。
特にTダイを使用したフィルム成形では、ダイから押し出された
樹脂が均一に広がらなかったりする事で、厚みのバラつきが発生ます。
厚みムラは単純に、【ダイの調整だけ】で改善できるとは限りません。
樹脂温度・吐出量・ダイ温度・ダイギャップ・冷却条件・引取速度
・樹脂の流動性・ダイ内の流動状態 等、複数の条件が相互に影響しています。
本記事では、フィルム成形時に発生する厚みムラの主な原因と
現場で実践できる改善方法について詳しく解説します。
■フィルム成形における【厚みムラ】とは?
〇フィルムの厚みムラとは、設定した目標厚みに対して
実際のフィルム厚みが場所や時間によって変動する現象です。
大きく分けると、以下の2種類があります。
①幅方向の厚みムラ
〇フィルムの左右方向で厚みが異なる現象です。
例えば、
- 中央部が厚い
- 両端部が厚い
- 左右で厚みが違う
- 一部だけ厚い、薄い
といった状態です。
Tダイ成形では特に重要な問題となります。
②長手方向の厚みムラ
〇フィルムの流れ方向、つまりMD方向で厚みが変動する現象です。
例えば、
- 一定間隔で厚くなったり薄くなったりする
- 時間とともに徐々に厚みが変化する
- 押出量が安定せず、フィルム厚みが変動する
といった状態です。
■フィルム厚みムラが発生する主な原因
①ダイギャップの不均一
〇Tダイ成形では、ダイリップのギャップがフィルム厚みに
大きく影響します。
ダイギャップが場所によって異なっている場合、当然ながら
樹脂の吐出量も変化し、幅方向の厚みムラに繋がります。
特に、
- ダイリップの調整不良
- ダイの熱変形
- ダイリップへの異物付着
- ダイの組付け不良
等が、原因になる事があります。
改善方法:
まずは、ダイリップ状態を確認します。
- ダイリップの清掃
- ダイギャップの確認
- リップ調整ボルトの確認
- ダイの水平、平行度の確認
等を行います。
また、ダイ温度によってダイが熱膨張し、実際のギャップが
変化する場合もある為、成形温度でのダイ状態を考える事が
重要です。
②樹脂温度が均一になっていない
〇樹脂温度のバラつきも、厚みムラの大きな原因です。
樹脂温度が変化すると、樹脂の粘度も変化します。
一般的に、樹脂温度が高くなると粘度が低下し
樹脂が流れやすくなります。
その結果、ダイ内部での流動状態が変化し、吐出量の
バラつきに繋がる場合があります。
改善方法:
- シリンダー各ゾーンの温度確認
- ダイ各ゾーンの温度確認
- 実際の樹脂温度の確認
- 温度センサーの異常確認
- ヒーター、冷却系統の確認
等を行います。
設定温度だけを見るのではなく、実際の樹脂温度を
把握する事が重要です。
③押出量が安定していない
〇長手方向の厚みムラでは、押出機からの吐出量が
安定しているかを確認する必要があります。
例えば、
- スクリュー回転数の変動
- 樹脂供給量の変動
- ホッパー内でのブリッジ
- ペレットの供給不良
- 樹脂の溶融状態の変化
等によって押出量が変化すると、フィルム厚みも
変動します。
改善方法:
押出機の運転条件を確認し、
【スクリュー回転数→吐出量→フィルム厚み】
の関係を確認します。
特にフィルム厚みが周期的に変化している場合は
押出量やスクリュー回転の変動を疑う事が重要です。
④樹脂の流動性が安定していない
〇使用する樹脂のMFRや粘度が安定していない場合も
厚みムラに繋がります。
例えば、
- 原料ロットの違い
- リサイクル材の配合変動
- 添加剤の分散状態
- 水分
- 熱履歴
- 樹脂の劣化
等によって樹脂の流動性が変化する事があります。
特に複数の樹脂を混合して使用する場合は、各材料の
混合状態や溶融状態にも注意が必要です。
⑤引取速度が安定していない
〇フィルム成形では、押出量だけでなく引取速度も
厚みを決める重要な要素です。
基本的には、
押出量が一定で引取速度が速くなる→フィルムは薄くなる
反対に、
引取速度が遅くなる→フィルムは厚くなる
という関係があります。
その為、引取ロールの速度変動や滑等があると
長手方向の厚みムラが発生する可能性があります。
改善方法:
- 引取速度の安定化
- ロール回転数の確認
- ロール表面状態の確認
- フィルムの滑り、蛇行の確認
- モーター、インバーターの状態確認
等を行います。
⑥冷却条件が安定していない
〇フィルム成形では、樹脂がダイから出た後の冷却条件も
重要です。
例えば、
- 冷却ロール温度の変動
- 冷却ロールとの接触状態
- エアー量の変動
- 冷却位置の変化
- フィルムの冷却速度の違い
等によって、フィルムの収縮状態が変化する場合があります。
特に結晶化樹脂では、冷却条件によって結晶化状態が
変化し、寸法や厚み、透明性などにも影響する事があります。
⑦ダイ内部の流動が均一になっていない
〇Tダイでは、押出機から送られてきた樹脂をダイ内部で
幅方向へ均一に分派うする必要があります。
しかし、
- 樹脂粘度が高い
- ダイ設計と材料が合っていない
- ダイ内部に異物がある
- 熱履歴による樹脂劣化物がある
- 滞留樹脂が存在する
等の場合、幅方向の流動状態が不均一になる事があります。
この場合、単純にダイリップを調整するだけでは改善しない
ケースもあります。
⑧ダイ温度の設計が適切ではない
〇ダイ温度は樹脂の流動性に大きく影響します。
ダイ温度が低すぎると、
- 樹脂粘度が高くなる
- 流動抵抗が増加する
- ダイ内での流動が不均一になる
可能性があります。
一方、温度が高すぎると、
- 樹脂の熱劣化
- ガス発生
- ゲル、異物発生
- 粘度低下
等の問題に繋がる可能性があります。
その為、単純に【温度を上げれば厚みムラは改選する】
と考えるのではなく、樹脂の適正加工温度範囲の中で
最適条件を探す事が重要です。
■厚みムラを改善する為のチェックポイント
〇厚みムラが発生した場合は、いきなりダイを調整するのではなく
原因を切り分ける事が重要です。
STEP1:厚みムラの方向を確認する
まず、幅方向なのか、長手方向なのかを確認します。
STEP2:押出条件を確認する
- スクリュー回転数
- 押出量
- 樹脂温度
- ダイ温
- 背圧
- 原料供給状態
等を確認します。
STEP3:引取条件を確認する
- 引取速度
- 冷却ロール温度
- ロール速度
- フィルムの蛇行
- 冷却状態
等を確認します。
STEP4:ダイを確認する
- ダイリップ
- ダイギャップ
- ダイ温度
- 異物、樹脂の付着
- ダイ内部の滞留
等を確認します。
STEP5:厚みデータを可視化する
厚みを測定するだけでなく、幅方向・長手方向の厚み分布を
グラフ化する事が非常に有効です。
例えば、
- 中央部だけ厚い
- 片側だけ厚い
- 一定周期で厚みが変化する
等、厚みムラのパターンを見る事で原因を推測しやすくなります。
■厚みムラ改善では【原因の切り分け】が重要
〇フィルムの厚みムラは、単一の原因で発生しているとは
限りません。
例えば、
樹脂温度の変動
↓
樹脂粘度の変化
↓
ダイ内部の流動変化
↓
吐出量の変化
↓
フィルム厚みの変化
というように、複数の要因が連鎖して発生する事があります。
その為、
【とりあえずダイを調整する】
【とりあえず温度を上げる】
といった対応ではなく、
- 押出
- ダイ
- 冷却
- 引取
- 原料
の5つの視点から原因を切り分ける事が重要です。
■まとめ
〇フィルム成形時の厚みムラは、フィルム製品の品質や
歩留まりに大きく影響する重要な成形不良です。
主な原因として、
- ダイギャップの不均一
- 樹脂温度のバラつき
- 押出量の変動
- 樹脂の流動性の変化
- 引取速度の変動
- 冷却条件のバラつき
- ダイ内部の流動不均一
- ダイ温度の不適合
等が挙げられます。
厚みムラを改善する為には、単純に一つの条件を変更する
のではなく、【どの方向に、どのようなパターンで変化しているか】
を確認し、原因を一つずつ切り分ける事が重要です。
特にTダイフィルム成形では、樹脂・押出機・ダイ・冷却・引取
全てを一つの成形システムとして考える事が、安定したフィルム成形
に繋がります。
