フィルム成形時において、製品表面に現れる
【ゲル】は、外観不良や透明性低下、強度低下
印刷性・ラミネート性の悪化などに繋がる代表的な
成形トラブルの一つです。
特に透明フィルムでは、小さなゲルであっても
目立ちやすく、製品の品質を大きく左右します。
【原料を変更したらゲルが増えた】
【押出温度を上げてもゲルが減らない】
【スクリーンチェンジャーを交換しても改善しない】
このような場合、単純に【異物が混入している】と
考えるだけでは、原因を特定できない事があります。
フィルム成形におけるゲルは、
- 樹脂の溶融物
- 熱劣化・酸化劣化した樹脂
- 長時間滞留した樹脂
- 添加剤やマスターバッチの凝集物
- 異種樹脂の混入
- 原料中の異物
- 押出機内部に付着、堆積した樹脂
等、様々な原因によって発生します。
本記事では、フィルム成形時に発生するゲルの主な原因と
原因別の具体的な対策について解説します。
■フィルム成形における【ゲル】とは?
〇フィルム表面に現れるゲルとは、周囲の樹脂とは異なる
状態になった溶融樹脂中の固形状・半固形状の異物や
未溶融物を指します。
フィルム上では、一般的に以下のような状態で確認されます。
- 白点
- 透明な粒状態
- 黒点
- 目ヤニ上の異物
- フィルム表面の突起
- 光学的なムラ
- 透明性の異常
特に透明フィルムでは、ゲルが光を散乱させる為
非常に目立ちます。
またゲルの種類によっては、フィルムの引張強度や
延伸性にも影響を与える場合があります。
■ゲルが発生する主な原因
〇フィルム成形時のゲルは、大きく分類すると
以下の原因が考えられます。
主な原因
- 樹脂の未溶融
- 樹脂の熱劣化
- 樹脂の滞留
- 添加剤、マスターバッチの凝集
- 異種樹脂の混入
- 原料由来の異物
- 押出機、ダイ内部の汚れ
- スクリーンやフィルターの問題
- 成形条件の不適合
重要なのは、ゲルの見た目だけで原因を判断しない事です。
同じように見えるゲルでも、発生メカニズムが
まったく異なる場合があります。
①樹脂の未溶融によるゲル
〇最も基本的な原因の一つが、樹脂が十分に
溶融していないケースです。
例えば
- 押出温度が低い
- スクリュー回転数が高すぎる
- 樹脂の供給量が多すぎる
- 樹脂の溶融能力が不足している
- スクリュー構成が材料に適していない
等が考えられます。
特に高粘度樹脂や融点の高い樹脂では、十分な溶融が
行われない事で未溶融物がフィルム中に残る可能性が
あります。
対策:
- シリンダー温度を適正化する
- ダイ温度を適正化する
- スクリュー回転数見直す
- 吐出量を下げる
- 滞留時間を適正化する
- スクリュー構成を見直す
ただし、単純に温度を上げれば良いわけではありません。
温度を上げすぎると、今度は樹脂の熱劣化によるゲルが
発生する可能性があります。
②樹脂の熱劣化によるゲル
〇熱劣化も、ゲル発生の重要な原因です。
樹脂が高温状態で長時間滞留すると、分子鎖が切断されたり
酸化・架橋反応などが起こったりする事で、周囲の樹脂とは
異なる状態での劣化物が発生する事があります。
特に注意したいのが、
- 押出機内部
- スクリュー表面
- アダプター
- ダイ内部
等に長時間滞留した樹脂です。
これらの劣化樹脂が剥離すると、突然大量のゲルとして
フィルムに流出する事があります。
対策:
- 成形温度を必要以上に上げない
- 長時間の空運転を避ける
- 長時間停止時は適切なパージを行う
- 滞留しやすい箇所を確認する
- 定期的に押出機、ダイ内部を清掃する
特に、【成形開始直後だけゲルが多い】という場合は
設備内部の滞留物を疑う必要があります。
③樹脂の滞留によるゲル
〇樹脂は、押出機内部に完全に均一な状態で流れているとは
限りません。
デッドスペースや流れの悪い場所が存在すると
樹脂が長時間滞留します。
溶融した樹脂は熱履歴を受け続け、劣化・変質した後に
剥離します。
特に確認したい場所
- スクリュー根本
- シリンダー内部
- アダプター
- ブレーカープレート周辺
- スクリーン周辺
- ダイ内部
- ダイリップ周辺
【材料そのものは問題ないのにゲルが出る】という場合は、
設備内部の滞留を疑うことが重要です。
④添加剤・マスターバッチの凝集
〇添加剤やますうたーバッチを使用する場合は、
分散不足によってゲル状の異物が発生する場合があります。
例えば、
- 顔料
- 無機フィラー
- 滑剤
- 帯電防止剤
- 難燃剤
- 各種マスターバッチ
等です。
添加剤の分散性が悪い場合、添加剤そのものが凝集して
フィルム中に残ります。
対策:
- マスターバッチの分散性を確認する
- 添加剤の配合量を見直す
- 混錬条件を最適化する
- スクリュー構成を確認する
- 原料の乾燥状態を確認する
- 原料メーカーの推奨条件を確認する
特にコンパウンド工程を経てフィルム成形する場合は
コンパウンド工程での分散状態がフィルム品質を大きく
左右します。
⑤異種異物の混入
〇異種異物の混入もゲルの原因になります。
例えば、
- PPにPEが混入
- PEにPPが混入
- 新材にリサイクル材を混入
- 前ロットの樹脂が残留
- 原料切り替え時のパージ不足
等です。
樹脂同士の相溶性が低い場合、混錬しても完全に一体化せず
フィルム中で異物のように見える事があります。
対策:
- 原料切り替え時のパージを徹底する
- 原料投入経路を清掃する
- ホッパー、フィーダーを確認する
- 前ロットの樹脂を完全に排出する
- 異種樹脂の混入を防止する
⑥原料由来の異物
〇原料そのものに異物が含まれている場合もあります。
特に再生樹脂やリサイクル材では、
- 異種樹脂
- 紙
- 金属
- 木片
- ゴム
- 劣化樹脂
- 未溶融物
等が混入する可能性があります。
この場合、押出条件を変更してもゲルが改善しない事
があります。
対策:
原料受け入れ時に、
- 外観確認
- 異物確認
- ペレット状態確認
- MFR確認
- 水分確認
- 必要に応じて異物分析
等を行います。
特に再生材を使用する場合は、原料品質のバラつきにも
注意が必要です。
⑦スクリーン・フィルターによる対策
〇押出機とダイの間にスクリーンバックやフィルターを設置
する事で、異物や未溶融物を捕捉出来ます。
ゲル対策として非常に有効な方法ですが、注意点もあります。
目の細かいスクリーンを使用すると異物除去能力高くなるが
圧力損失が大きくなります。
その結果、
- 押出圧力上昇
- 吐出量低下
- 樹脂温度上昇
- 滞留時間増加
等に繋がる可能性があります。
したがって、単純に【細かいフィルターに変更する】のではなく
樹脂・吐出量・圧力・ゲル量を総合的に見ながら選定する事が
重要です。
⑧ダイ内部の汚れ・デポジット
〇フィルム成形では、ダイ内部に樹脂が付着・堆積
する事があります。
これが徐々に劣化し、剥離する事でゲルとしてフィルムに
混入する場合があります。
特に、【最初は問題ないが、時間が経つとゲルが増える】
という場合は、ダイ内部のデポジットを疑う必要があります。
対策:
- 定期的なダイ清掃
- 適切なパージ
- 成形温度の適正化
- 滞留部の確認
- 樹脂に適したダイ設計、条件の検討
■ゲル対策では【温度を上げる・下げる】の判断が重要
〇ゲルが発生した時、
【溶けていないから温度を上げよう】と考えがちですが
必ずしも政界ではありません。
例えば、未溶融が原因の場合は
→温度を適正範囲で上げる事で改善する可能性あり
しかし、熱劣化が原因の場合は
→温度を下げる事で改善する可能性があります。
詰まり、ゲルの発生原因を特定してから成形条件を
変更する事が重要です。
■ゲル発生時の確認ポイント
〇ゲルが発生した場合は、以下の順番で確認すると
原因を絞りやすくなります。
STEP1:ゲルの外観を確認
- 白色か
- 黒色か
- 透明か
- 粒状か
- 筋状か
- 大きさは一定か
STEP2:発生タイミングを確認
- 成形開始直後
- 一定時間経過後
- 原料切り替え後
- 温度変更後
- 回転数変更後
STEP3:原料を確認
- 新材か
- 再生材か
- マスターバッチを使用しているか
- 水分は問題ないか
- 異物はないか
STEP4:設備を確認
- スクリュー
- シリンダー
- スクリーン
- アダプター
- ダイ
STEP5:成形条件を確認
- シリンダー温度
- ダイ温度
- スクリュー回転数
- 吐出量
- 押出圧力
- 滞留時間
このように、原料・設備・条件の3方向から原因を
切り分ける事が、ゲル対策の基本です。
■フィルム成形におけるゲル対策まとめ
〇フィルム成形時のゲルは、単純な異物混入だけが原因では
ありません。
| 原因 | 主な対策 |
| 未溶融 | 温度・吐出量・回転数・混練条件見直し |
| 熱劣化 | 温度低減・滞留防止・適切なパージ |
| 滞留時間 | デッドスペース・設備内部を確認 |
| 添加剤凝集 | 分散性・配合・混錬条件見直し |
| 異種樹脂混入 | パージ・清掃・原料管理 |
| 原料異物 | 原料検査・フィルター・スクリーン |
| ダイ汚れ | ダイ清掃・パージ・温度条件見直し |
| スクリーン不足 | メッシュ・構成・交換時期を検討 |
■まとめ
〇フィルム成形時に発生するゲルは、フィルムの外観品質や
透明性、物性を低下させる重要な成形不良です。
その原因は、
- 未溶融
- 熱劣化
- 滞留
- 添加剤の凝集
- 異種樹脂
- 原料異物
- 設備内部の汚れ
等、多岐に渡ります。
その為、ゲルが発生したからと言って、すぐに温度や
回転数だけを変更するのではなく、
- 原料
- 押出機
- スクリーン、フィルター
- ダイ
- 成形条件
を一つずつ確認し、原因を切り分ける事は重要です。
特に重要なのは、【ゲルの形状・色・大きさ・発生タイミング】
から原因を推定する事です。
フィルム成形では、わずかなゲルでも製品品質に大きな
影響を与える場合があります。
その為、安定したフィルム品質を実現する為には、
原料管理だけでなく、押出機内部の状態、混練・溶融状態、
スクリーン、ダイ、そして成形条件を総合的に管理する事が
重要です。
ゲル対策は【温度調整】だけではありません。
原料・設備・プロセスを総合的に見直す事が安定した
フィルム成形への近道です。
