樹脂と樹脂、あるいは樹脂と添加剤を混ぜて新しい材料を
作る【コンパウンド】では、【相溶性】が非常に重要です。
【2種類の樹脂を混ぜたのに、期待した強度が出ない】
【フィルムにすると白化する】
【分散が悪く、表面にブツや異物が発生する】
【混練条件を変えても物性が安定しない】
このような問題の原因の一つとして考えられるのが
材料同士の相溶性の不足です。
特に二軸混練を使用した樹脂コンパウンドでは、単純に
【よく混ざれば一体化する】という訳ではありません。
材料同士の相溶が悪い場合、どれだけ強いせん断を加えても
完全に一体化する事は難しくなります。
本記事では、相溶性の基本的な考え方から、非相溶・部分相溶との違い
二軸混練における相溶性の改善方法、総溶化剤の役割まで
樹脂コンパウンドの実務に沿って解説します。
■相溶性とは?
〇相溶性とは、簡単に言うと
【異なる材料同士が、どれだけお互いになじみやすいか】
を表す性質です。
例えば、樹脂Aと樹脂Bを混ぜたとします。
相溶性が高い場合、両社は比較的均一に混ざり合い
材料全体として安定した状態を作りやすくなります。
一方、相溶性が悪い場合は、混ぜても材料同士が分離しようとします。
イメージとしては、
相溶性が高い → AとBがなじみやすい
→ 均一な構造を形成しやすい
相溶性が低い → AとBがなじみにくい
→ 海島構造などの異相構造になりやすい
という違いがあります。
■【混ざる】と【相溶する】は同じではない
〇ここは樹脂コンパウンドを考える上で非常に重要なポイントです。
二軸混練機に材料を投入すると、スクリューによって材料が
細かく分散されます。
しかし、【細かく分散した=相溶した】とは限りません。
例えば、相溶性の低い樹脂Aと樹脂Bを二軸混錬すると
樹脂Bが微細な粒子となって樹脂Aの中に分散する事があります。
見た目は均一に混ざっていても、分子レベルでは別々の相として
存在している場合があります。
つまり、
混練=物理的に混ぜる
相溶=材料同士が熱力学的に安定した状態でなじむ
という違いがあります。
その為、二軸混練では【どれだけ混ぜるか】だけではなく
【そもそも材料同士が相溶しやすい組み合わせなのか?】
を考える事が重要です。
■相溶性が低いと何が起こる?
〇相溶性が低い材料をコンパウンドすると、様々な問題が
発生する可能性があります。
①強度が低下する
〇樹脂同士の界面接着が弱い場合、引張強度や衝撃強度などの
物性が期待値を下回る事があります。
特に異なる樹脂をブレンドする場合、界面状態が最終物性に
大きく影響します。
②外観不良が発生する
〇相溶性が低い材料では、フィルムや成形品で
- 白化
- 曇り
- ブツ
- ムラ
- 光沢低下
等の問題に繋がる事があります。
特に透明フィルムでは、微細な相分離構造でも光の
散乱によって白濁して見える事が「あります。
③分散不良が発生する
〇相溶性が悪い材料では、混練しても分散状態が
安定しない事があります。
混練直後は良好に見えても、保管中や成形時にドメインが
成長し、物性や外観が変化するケースもあります。
④フィルム成形性が悪化する
〇二軸混練後にフィルム成形を行う場合、相溶性の不足にって、
- 厚みムラ
- 表面荒れ
- ブツ
- ゲル状異物
- 白化
- フィッシュアイ
等に繋がる可能性があります。
その為、コンパウンドだけでなく、フィルム成形まで
考えた材料設計が重要になります。
■相溶性・分散性・分散状態の違い
〇樹脂コンパウンドでは【相溶性】と【分散性】を混合
しやすい為、注意が必要です。
・相溶性
〇材料同士がどれだけなじみやすいか
・分散性
〇一方の材料が、も追う一方の材料の中でどれだけ細かく
均一に分散できるか。
例えば、相溶性が低い樹脂同士でも、二軸混練によって
非常に細かく分散させることは可能です。
しかし、時間の経過や温度変化によって再び凝集・相分離
する場合があります。
したがって、【分散出来ているから相溶している】
とは限りません。
■相溶性を左右する主な要因
〇相溶性は、単純に樹脂の種類だけで決まるものではありません。
①樹脂の化学構造
〇樹脂同士の分子構造や極性が大きく関係します。
例えば、極性の高い樹脂と極性の低い樹脂では、一般的に
相溶作用が弱く、相溶しにくい組み合わせがあります。
②極性
〇材料の【極性】は相溶性を考えるうえで重要な要素です。
似た極性を持つ材料同士は比較的なじみやすく、極性が
大きく異なる材料では相溶性が低くなる傾向があります。
ただし、実際の樹脂ブレンドでは分子量、官能基、結晶性
等、複数の要素が関係します。
③分子量
〇同じ種類の樹脂でも、分子量が異なると流動性や混錬状態が
変化します。
特に二軸混練では、粘度差が大きい材料を組み合わせると
分散状態に影響を与える場合があります。
④溶融粘度
〇二軸混練では、材料が溶融した状態でどのように流れるか
が重要です。
樹脂Aと樹脂Bの粘度差が大きい場合、単純な混練条件では
均一な分散が難しくなることがあります。
その為、
材料の相溶性+粘度+混練条件
をセットで考える必要があります。
⑤結晶性
〇結晶性樹脂の場合、結晶化挙動も相溶性や分散状態に
影響します。
溶融状態では混ざっていても、冷却時に結晶化する事で
相構造が変化するケースがあります。
特にフィルム成形では、冷却条件まで含めて評価する事が重要です。
■相溶化剤とは?
〇相溶性が低い材料同士を組み合わせる場合に使用されるのが
【相溶化剤】です。
相溶化剤は簡単に言うと、
【仲の悪い材料同士を繋いでくれる橋渡し役】
のようなものです。
例えば、樹脂Aと樹脂Bの相溶性が低い場合、相溶化剤を
添加する事で、AとBの界面に作用し、界面接着性や
分散状態を改善できる場合があります。
その結果、
- 分散性向上
- 界面接着向上
- 衝撃強度向上
- 物性安定化
- 外観改善
等が期待できます。
■相溶化剤の代表的な考え方
〇相溶化剤には様々なタイプがあります。
代表的な考え方としては、
- ブロック共重合体
- クラフト共重合体
- 反応性相溶化剤
等があります。
特に藩王性相溶化剤では、樹脂中の官能基と反応する事で
異なる樹脂同士の界面を改善する方法があります。
例えば、酸無水物変性ポリマーなどは、特定の樹脂との
相溶性や界面接着性を改善する目的で使用される事があります。
ただし、相溶化剤は【入れれば必ず良くなる】
というものではありません。
添加量が多すぎると、逆に物性や流動性に悪影響を
与える場合もあります。
■二軸混練での相溶性を改善するポイント
〇二軸混練では、相溶性そのものを変えるだけでなく
材料同士の分散状態を改善する事も重要です。
①混練温度
〇まず重要なのが温度です。
温度が低すぎると樹脂が十分に溶融せず、分散不良に繋がります。
一方、温度が高すぎると、
- 樹脂の熱劣化
- 添加剤の分散
- 粘度低下
- 反応が進みすぎ
等が発生する可能性があります。
したがって、材料の融点・軟化温度・熱分解温度を考慮して
温度条件を設定します。
②スクリュー構成
〇二軸混練機では、スクリュー構成によって混練状態が大きく
変わります。
例えば、
- ニーディングディスク
- リバースエレメント
- ミキシングエレメント
などを適切に配置する事で、せん断や滞留時間を
調整できます。
ただし、強いせん断を加えれば必ず良くなるわけではありません。
③スクリュー回転数
〇回転数を上げる事でせん断力を強くすることが出来ます。
しかし、過度な回転数は発熱や樹脂劣化に繋がる可能性があります。
その為、
【回転数を上げる=混練性が必ず向上する】
とは考えず、トルク・吐出量・温度・外観・分散状態 等を
総合的に確認する事が重要です。
④原料投入方法
〇材料の投入位置や投入順序も重要です。
例えば、樹脂と添加剤をどの位置から投入するかによって
溶融状態や分散状態が変わる場合があります。
特にフィラーや高粘度材料を使用する場合には
投入方法の検討が重要です。
■相溶性を評価する方法
〇相溶性を判断する為には、外観だけでなく様々な
評価方法があります。
代表的なものとして、
- 引張試験
- 衝撃試験
- DSC
- DMA
- SEM観察
- 光学顕微鏡観察
- MFR、MVR測定
- フィルム外観評価
等があります。
例えば、顕微鏡観察によって、樹脂Aと樹脂Bの分散状態を
確認する事で、ドメインサイズや分散状態を評価出来ます。
また、DSCやDMAなどを使用する事で、材料の熱的・粘弾性的な
挙動から相構造を観測できる場合があります。
■相溶性を改善する為には【材料×条件】の両方を見る
〇樹脂コンパウンドで重要なのは、
【材料の相性が悪いから混ざらない】
と簡単に判断しない事です。
実際には、
- 樹脂の種類
- 極性
- 分子量
- 年度
- 添加剤
- 相溶化剤
- 混練温度
- スクリュー回転数
- スクリュー構成
- 吐出量
- 投入方法
- 滞留時間
等、多くの条件が関係しています。
つまり、相溶性の問題を解決するには、
【材料設計と混練条件を一体で考える】事が重要です。
■N.6株式会社の二軸混練コンパウンド試作
〇相溶性の問題は、材料メーカーのデータだけでは
判断が難しいケースもあります。
実際の二軸混練では、材料の組み合わせだけでなく
温度、回転数、吐出量、スクリュー構成 等によって
分散状態が変化する為です。
N.6株式会社では、二軸混練機を使用した樹脂コンパウンドの
試作を行い材料の組み合わせや混練条件を検討しています。
【この樹脂同士は混ざるのか?】
【相溶化剤を入れたらどう変わるのか?】
【分散状態を改善したい】
【コンパウンド後のフィルム成形まで確認したい】
といった課題では、実際に試作を行い、条件比較する事が重要です。
相溶性は、単なる【混ぜる・混ざらない】ではなく
最終製品に必要な物性や外観を実現できるかという
視点で評価する必要があります。
