フィルム成形において、製膜したフィルム同士が貼り付き
スムーズに剥がれなくなる【ブロッキング】は非常に
代表的なトラブルの一つです。
特に、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)
等のフィルムでは、巻き取り後のフィルム同士が密着し、
フィルムを繰り出せない、加工機で安定して搬送出来ない
印刷やラミネート工程でトラブルが発生するといった
問題に繋がる事があります。
ブロッキングは単純に【フィルムが柔らかいから発生する】
という訳ではありません。
樹脂の種類、添加剤、表面状態、フィルム温度、冷却条件
巻き取り圧力、保管温度、フィルムの表面の粗さ 等
複数の要因が関係しています。
本記事では、フィルム成形時に発生するブロッキングの原因と
その改善方法について詳しく解説します。
■フィルムの【ブロッキング】とは?
〇ブロッキングとは、フィルム同士が接触した際に貼り付き
剥離しにくくなる現象です。
フィルムをロール状に巻き取る場合、フィルムの表面と
裏面が何層にも重なります。
この時、
フィルム同士が密着
↓
時間の経過とともに密着が強くなる
↓
ロールからフィルムを繰り出す際に剥がれにくくなる
という状態が発生します。
軽度であればフィルムを手で剥がす事が出来ますが
ブロッキングが強くなると、
- フィルムが破れる
- フィルムが伸びる
- ロールが正常に繰り出せない
- 自動包装機で搬送不良が発生する
- 印刷工程でフィルムが重送する
- ラミネート工程で影響する
等の問題に繋がります。
■フィルムのブロッキングが発生する主な原因
〇ブロッキングの原因は大きく分けると
以下のように整理出来ます。
主な原因
1. フィルム表面が滑らかすぎる
2. フィルム温度が高い
3. 巻き取り時の圧力が高い
4. 冷却が不十分
5. 樹脂の種類、グレードによる影響
6. 添加剤の種類、配合量
7. フィルム表面への添加剤の移行
8. フィルムの厚みや成形条件
9. 保管温度が高い
10. 経時変化
つまり、ブロッキング対策では【材料】と【成形条件】
の両方を見る必要があります。
①フィルムが滑らかすぎる
〇フィルム表面が非常に平滑になると、フィルム同士の
接触面積が増加します。
接触面積が大きくなる事で、フィルム同士が
密着しやすくなります。
特に透明性を重視してフィルム表面を非常に平滑にすると
ブロッキングが発生しやすくなるケースがあります。
その為、フィルム用途によっては、
【透明性】と【部ロッキング性】のバランスを
考える必要があります。
②フィルム温度が高い
〇フィルム温度が高い状態で巻き取ると、ブロッキングが
発生しやすくなります。
特にPE等の比較的柔らかい樹脂では、冷却が不十分な状態で
巻き取ると、フィルム同士が圧着されやすくなります。
その為、
ダイ → 冷却 → 引取 →巻取り
までの温度管理が重要になります。
フィルムを十分に冷却してから巻き取る事で
ブロッキングを低減できる場合があります。
③巻取り圧力が高い
〇フィルムをロール状に巻き取る際、巻取り張力や
ニップ圧が高すぎると、フィルム同士が強く押し付けられます。
すると、
接触面積増加+圧力増加+フィルム温度
の組み合わせによって、ブロッキングが発生しやすくなります。
特に、柔らかいフィルムでは巻き取り条件の生協が大きくなります。
したがって、ブロッキングが発生した場合には、材料だけを
見るのではなく、
- 巻き取り張力
- 巻き取り速度
- ニップ圧
- ロール硬さ
- フィルム温度
等も確認する事が重要です。
④冷却不足
〇フィルム成形では、押出された溶融樹脂を冷却し
安定したフィルム状態にする必要があります。
冷却不足の場合、フィルムが十分に固化しないまま
巻き取られる事があります。
その状態でフィルム同士が重なると、ブロッキングが
発生しやすくなります。
改善方法:
- 冷却ロール温度の見直し
- 冷却能力の確認
- エアー冷却条件の見直し
- ライン速度の調整
- フィルム温度の確認
等が考えられます。
⑤樹脂の種類・グレード
〇ブロッキング性は樹脂そのものの性質に大きく左右されます。
例えば、PE系フィルムでは、樹脂の種類や密度、分子量
MIなどによって
- 柔軟性
- 表面状態
- 粘着性
- 結晶化挙動
- 摩擦特性
等が変化します。
同じ【PEフィルム】であっても、使用するグレードによって
ブロッキング性が大きく変わる事があります。
その為、材料変更によってブロッキングを改善する事も
有効な手段です。
⑥アンチブロッキング剤の不足
〇ブロッキング対策として代表的なのが、
【アンチブロッキング剤(AB剤)】です。
アンチブロッキング剤には、フィルム表面に微細な凹凸を
形成する事で、フ
フィルム同士の実質的な接触面積を減らす
働きがあります。
- シリカ
- タルク
- 炭酸カルシウム
- その他無機微粒子
等があります。
フィルム表面に微細な凹凸が形成される事で、
フィルム同士が完全に密着する事を防ぎます。
■アンチブロッキング剤を入れれば良いわけではない
〇ここが重要なポイントです。
アンチブロッキング剤は、添加量を増やせば増やすほど
良いというわけではありません。
添加量が多すぎると
- 透明性低下
- ヘーズ上昇
- 表面状態の悪化
- フィルム強度への影響
- 印刷性への影響
- シール性への影響
等が発生する可能性があります。
つまり、
- ブロッキング性
- 透明性
- ヘーズ
- 滑り性
- シール性
- 機械的強度
等を総合的に評価しながら、最適な添加量を決める
必要があります。
■スリップ剤との組み合わせ
〇ブロッキング対策では、アンチブロッキング剤だけでなく
スリップ剤も重要です。
スリップ剤はフィルム表面の摩擦を低減し、フィルム同士や
フィルムと加工機との滑り性を改善する目的で使用されます。
代表的なものとして、脂肪酸アミド系などがあります。
ただし、スリップ剤はフィルム表面への移行(ブリード)
によって効果を発現するものもある為、添加量や成形条件
によって性能が変化します。
したがって、
アンチブロッキング剤=フィルム同士の密着を抑える
スリップ剤=摩擦を低減する
というように、それぞれの役割を理解して処方を設計
する事が重要です。
■ブロッキング対策として見直したい成形条件
〇ブロッキングが発生した場合、まずは以下の条件を
確認する事をお勧めします。
①フィルム温度
〇巻取り前のフィルム温度を確認します。
温度が高い場合は、冷却条件やライン速度を見直します。
②冷却条件
〇冷却ロール、エアー冷却 等の条件を確認します。
③巻取り張力
〇張力が高すぎないか確認します。
④ニップ圧
〇ロール同士の圧力が高すぎないか確認します。
⑤ライン速度
〇ライン速度が速すぎる場合、冷却不足に繋がる可能性があります。
⑥フィルム厚み
〇厚みが変化すると冷却挙動やフィルムの柔軟性も変化する為
厚み条件も確認します。
■材料面からのブロッキング改善
〇成形条件を調整しても改善しない場合は、材料側からの
アプローチが有効です。
例えば、
- 樹脂グレードの変更
- アンチブロッキング剤の追加
- AB剤の種類変更
- AB剤の添加量追加
- スリップ剤の追加
- スリップ剤の添加量変更
- 添加剤の組み合わせ変更
- マスターバッチ化
等が考えられます。
ただし、材料を変更すると透明性や機械特性、シール性
等にも影響する可能性があります。
その為、ブロッキングだけを見て材料を決めるのではなく
最終製品として必要な性能を総合的に評価する事が重要です。
■ブロッキング対策の評価方法
〇ブロッキング対策では、【はがれやすくなった】という感覚的な
評価だけでなく、可能な限り数値化する事が重要です。
例えば、
- ブロッキング強度
- 摩擦係数(COF)
- ヘーズ
- 全光線透過率
- フィルム厚み
- 引張強度
- 伸び
- シール強度
等を評価します。
特にフィルム製品では、
【ブロッキング性を改善した結果、透明性が悪化した】
というようなトレードオフが起こる事があります。
その為、複数の評価項目を組み合わせて最適条件を探す事が
重要です。
■ブロッキング対策の基本的な考え
〇ブロッキングが発生した場合は、いきなり添加剤を増やすのではなく、
①材料
↓
②押出・成形条件
↓
③冷却条件
↓
④巻き取り条件
↓
⑤添加剤
というように、原因を一つずつ切り分けていくことが重要です。
例えば、
【巻取り時のフィルム温度が高い】
事が原因なのに、アンチブロッキング剤を増量してしまうと
本来必要のない添加剤を増やすことになります。
逆に冷却条件を改善してもブロッキングが残るのであれば
材料や添加剤の処方を検討する、といったアプローチが有効です。
■まとめ
〇フィルム成形時のブロッキングは、フィルム同士が密着して
剥がれにくくなる代表的な成形トラブルです。
主な原因として、
- フィルム表面の平滑性
- フィルム温度
- 冷却不足
- 巻き取り張力
- ニップ圧
- 樹脂グレード
- アンチブロッキング剤
- スリップ剤
- ほかの温度
等が挙げられます。
特に重要なのは、【ブロッキング=添加剤の問題】と
決めつけない事です。
成形条件、冷却条件、巻き取り条件、材料処方を総合的に
確認する事で、より効果的な改善に繋がります。
また、アンチブロッキング剤やスリップ剤を使用する場合も
添加量を増やせばいいわけではありません。
ブロッキング性・透明性・ヘーズ・摩擦係数・シール性・機械物性
等のバランスを見ながら、最適な材料と成形条件を見つける事が
重要です。
フィルム成形では、わずかな材料や温度、巻き取り条件の違いが
製品品質に大きく影響します。
その為、実際の成形試験を通じて条件を一つずつ切り分け
最適条件を見つける事がブロッキング改善への近道となります。
【なぜ貼り付くのか】を材料と成形条件の両面から考える事!
これが、フィルムのブロッキング対策において最も重要なポイントです。
