フィルム成形において、【フィルムにシワが発生する】
【一度シワが出ると安定しない】【巻取り時にシワが増える】
といった問題は、非常によくあるトラブルの一つです。
フィルムのシワは、単純に【冷却が悪い】【巻取り条件が悪い】
といった一つの原因だけで発生するとは限りません。
実際には
- ダイからの吐出状態
- フィルム厚みの均一性
- 冷却条件
- エアーの当たり方
- 引取速度
- ニップロールの状態
- 巻取り張力
- 樹脂温度
- フィルムの収縮
- 装置のアライメント
等、複数の条件が組み合わさってシワが発生する
ケースがあります。
特にフィルム成形では、わずかな厚み差や温度差が
引取・巻取り工程で大きなシワに繋がる事があります。
本記事では、フィルム成形時に発生するシワについて
主な発生原因と具体的な改善対策をわかりやすく解説します。
■フィルム成形時でシワが発生する主な原因
〇フィルムのシワは、大きく分けると以下のような
原因が考えられます。
- フィルム厚みの不均一
- 冷却ムラ、温度ムラ
- 引取速度、ライン速度の不適切
- ニップロールの状態
- 巻取り張力の不適切
- フィルムの収縮
- ダイからの吐出ムラ
- 装置のアライメント不良
- 樹脂温度、成形温度の不適切
- 原料そのものの特性
①フィルム厚みの不均一
〇フィルムに厚みムラがあると、場所によって
引っ張られ方や収縮量が変わります。
例えば、
- 厚い部分 → 硬く、収縮しにくい
- 薄い部分 → 伸びやすく、収縮しやすい
という違いが生じます。
この状態で引取や巻取りを行うと、フィルム幅方向で
張力差が発生し、シワに繋がる事があります。
改善対策:
- ダイリップの調整
- ダイ温度の均一化
- 押出量の安定化
- 樹脂の均一な溶融、混練
- フィルム厚みの幅方向測定
- 引取速度の安定化
特に、シワがフィルム幅方向の特定位置に繰り返し
発生する場合は、厚みムラを疑う事が重要です。
②冷却ムラ・温度ムラ
〇フィルム成形では、冷却状態が均一でない場合も
シワが発生します。
フィルムの一部分だけが急激に冷却されたり、逆に
冷却が遅れたりすると、フィルム内部に残留応力や
収縮差が生じます。
その結果、冷却後のフィルムが平坦にならず
シワとして現れる場合があります。
改善対策:
- 冷却ロール温度の安定化
- 冷却ロールとの接触状態の確認
- エアー冷却の均一化
- 冷却風の強さ、方向の調整
- フィルムと冷却ロールの密着性確認
特に薄膜では、わずかな温度差でもフィルムの状態が
変化しやすい為、注意が必要です。
③引取速度が適切でない
〇引取速度が速すぎると、溶融状態に近いフォイルに
過剰な張力がかかる場合があります。
逆に引取速度が遅すぎると、フィルムが十分に安定する
前に次工程へ送られ、フィルムがたるんだり、蛇行した
りする事があります。
改善対策:
引取速度を少しずつ変更し、
【フィルムが最も安定する速度】を
探る事が重要です。
また、押出量と引取速度のバランスも確認します。
④ニップロールの状態
〇ニップロールはフィルムを挟み込み、安定して
搬送する為の重要な設備です。
しかし、
- ロールの平行度が悪い
- ロール表面に傷や汚れがある
- ロールの圧力が左右で異なる
- ロールの摩耗
- ロールのたわみ
等があると、フィルム幅方向で搬送速度や圧力に
差が生じます。
その結果、フィルムが一方向へ引っ張られ、シワが発生
する事があります。
改善対策:
- ニップロールの平行度確認
- 左右のニップ圧確認
- ロール表面の清掃
- ロール摩耗状態確認
- ロールのたわみ確認
シワの発生位置が常に同じ場合は、設備側の確認も重要です。
⑤巻取り張力が強すぎる
〇フィルムの巻取り工程では、張力が強すぎても
弱すぎても問題になります。
張力が強すぎると、フィルムが過剰に引き伸ばされ
幅方向の収縮差などによってシワが発生する場合があります。
一方、張力が弱すぎると、フィルムがたるんで巻取り時に
シワを巻き込む可能性があります。
改善対策:
巻取り張力を適正化し、
【フィルムがピンと張っているが、過剰に引っ張っていない状態】
を目指します。
特に薄膜では、厚膜よりも張力の影響を受けやすい為
慎重な調整が重要です。
⑥フィルムの収縮
〇樹脂によっては、冷却後に大きく収縮するものがあります。
特に結晶性樹脂では、冷却条件や成形条件によって
結晶状態が変化し、それに伴って収縮量も変化します。
例えば、
- PP
- PE
- PA
等では、冷却条件によってフィルムの収縮挙動が
変化する可能性があります。
幅方向・流れ方向で収縮量が異なると、その差が
シワとして現れる場合があります。
改善対策:
- 冷却条件の見直し
- 樹脂温度の安定化
- 引取速度の調整
- 冷却ロール温度の調整
- 成形後のフィルム温度管理
樹脂の結晶化特性を理解した上で条件を設定する事が重要です。
⑦ダイからの吐出ムラ
〇Tダイを使用したフィルム成形では、ダイからの樹脂吐出が
均一でない場合、フィルム厚みが均一になりません。
厚みムラが発生すると、その後の引取・冷却・巻取り
工程で張力差が生まれ、シワに繋がる可能性があります。
主な原因:
- ダイ温度ムラ
- ダイリップ調整不良
- 樹脂の流動性不足
- ダイ内部の滞留
- 異物、ゲル
- 押出量の変動
改善対策:
ダイ温度を安定させ、必要に応じてダイリップを調整します。
また、フィルムの幅方向厚みを測定し、
【どの位置で厚みが変化しているのか】
を確認する事が重要です。
⑧装置のアライメント不良
〇意外と見落とされやすいのが、装置そのものの位置関係です。
例えば、
- ダイと冷却ロールの位置関係
- 冷却ロールとニップロールの平行度
- ニップロールと巻取り機の位置
- ロールの左右高さ
等がずれていると、フィルムが蛇行しやすくなります。
蛇行したフィルムは、幅方向の張力が不均一になり
シワが発生しやすくなります。
改善対策:
定期的に、【各ロールが正しく平行になっているか】
を確認する事が重要です。
⑨樹脂温度・成形温度の問題
〇樹脂温度が低すぎると、溶融樹脂の流動性が低下し
ダイからの均一に吐出されにくくなる場合があります。
一方、温度が高すぎる場合には、
- 樹脂の熱劣化
- 粘度低下
- 滞留
- ガス発生
等に繋がる可能性があります。
その結果、吐出状態が不安定になり、最終的に
シワに繋がるケースもあります。
改善対策:
単純に、【温度を上げる・下げる】のではなく、
樹脂温度・ダイ温度・冷却温度・引取速度を
セットで考える事が重要です。
⑩原料そのものが原因の場合
〇同じ成形条件でも、使用する樹脂によってフィルムの
安定性は変化します。
例えば、
- MFR
- 分子量
- 分子量分布
- 結晶性
- 年度
- 添加剤
- フィラー
- 水分
- リサイクル材の混合比率
等によって、溶融状態や収縮挙動が変化します。
特にリサイクル樹脂や複数樹脂のブレンドでは
原料ロットによる変動にも注意が必要です。
■シワが発生した時の確認ポイント
〇フィルムにシワが発生した場合、いきなり条件を大きく
変更するのではなく、原因を一つずつ切り分ける事が
重要です。
STEP1:シワの発生位置を見る。
〇まず、【どこでしっわが発生しているのか?】
を確認します。
- ダイ直後
- 冷却ロール付近
- ニップロール付近
- 引取工程
- 巻取り工程
発生場所によって、疑うべき原因が変わります。
STEP2:シワの方向を見る
〇シワの方向も重要です。
- 流れ方向のシワ
- 幅方向のシワ
- 斜め方向のシワ
- 中央部だけのシワ
- 両端部のシワ
等を確認します。
STEP3:厚みムラを確認
〇フィルムの幅方向、流れ方向の厚みを測定します。
厚みムラとシワの発生位置が一致していれば、ダイや
押出条件が原因である可能性が高くなります。
STEP4:張力を確認
〇引取、巻取り超旅行を確認します。
張力が強すぎないか、逆にフィルムがたるんでいないかを
確認します。
STEP5:温度条件を確認
- シリンダー温度
- ダイ温度
- 樹脂温度
- 冷却ロール温度
等を確認します。
■フィルムのシワ対策で重要なのは、
【一つずつ条件を変える】事です!
〇シワが発生すると、
【温度を変える】
【速度を変える】
【張力を変える】
等、複数の条件を一度に変更してしまいがちです。
しかし、これでは何が効果的だったのかわからなくなります。
そこで、
①温度
②引取速度
③冷却条件
④張力
⑤設備状態
のように、条件を一つずつ確認していく事をお勧めします。
さらに、
【変更前の条件】【変更後の条件】【シワの状態】
を記録しておく事で、最適条件を見つけやすくなります。
■まとめ
〇フィルム成形時のシワは、単純に巻取り条件だけが
原因とは限りません。
主な原因として、
- フィルム厚みムラ
- 冷却ムラ
- 引取速度
- ニップロール
- 巻取り張力
- フィルム収縮
- ダイ吐出ムラ
- 装置アライメント
- 成形温度
- 樹脂特性
等、様々な要因が考えられます。
特に重要なのは、
【どこでシワが発生しているのか】
を確認する事です。
シワの発生場所・方向・形状を確認し、厚み・温度・速度・
張力・設備状態を順番に確認する事で、原因を効率的に
切り分ける事が出来ます。
フィルム成形では、【温度・流量・速度・冷却・張力】の
バランスが非常に重要です。
シワを単なる外観不良として捉えるのではなく、成形条件や
設備状態を見直す為の重要なサインとして捉える事で
より安定したフィルム成形に繋げる事が出来ます。
