フィルム成形では、【厚み】や【透明性】だけでなく
フィルム表面の粗さ(表面粗さ)も品質を左右する
重要な管理項目です。
フィルム表面が粗くなると、
- 光沢が低下する
- 透明性が悪化する
- 印刷性やコーティング性に影響する
- 接着性が変化する
- 摩擦係数が変化する
- フィルム同士の滑り性が変わる
- 外観不良に繋がる
等、様々な問題が発生する可能性があります。
特にフィルム製品では、わずかな表面状態の違いが
【ザラつき】【曇り】【光沢ムラ】【ブロッキング】
【滑り性の変化】といった製品品質に直結します。
その為、フィルム成形では【表面粗さを測定して数値管理する】
事が非常に重要です。
この記事では、フィルム成形時の表面粗さについて
発生原因、測定方法、管理ポイント、改善対策
まで詳しく解説します。
■フィルムの【表面粗さ】とは?
〇表面粗さとは、フィルム表面に存在する微細な
凹凸の大きさや状態を表す指標です。
一見すると平滑に見えるフィルムでも、顕微鏡レベルでは
細かな凹凸が存在しています。
代表的な表面粗さの評価指標として、
- Ra:算術平均粗さ
- Rz:最大高さ、十点平均粗さ等の高さ方向の指標
- Rq:二乗平均平方根粗さ
等があります。
特にRaは、表面粗さを評価する際にはよく使用される
代表的なパラメータです。
ただし、Raの数値だけでフィルム表面の状態を完全に
評価できるわけではありません。
同じRaでも、凹凸の形状や周期、突起の有無によって
実際のフィルムの見た目や滑り性が異なる場合があります。
■フィルム表面粗さに影響する主な要因
〇フィルムの表面粗さは、単純に【樹脂の種類】だけで
決まるものではありません。
主に以下のような要因が関係しています。
①樹脂の種類・グレード
〇PE、PP、PET、PA、EVOH 等、樹脂によって
溶融粘度や結晶化挙動、収縮特性が異なります。
さらに同じ樹脂でも、グレードによって流動性や分子量
添加材量 等が異なる為、表面状態にも差が出ます。
②成形温度
〇成形温度が低すぎると、樹脂の流動性が不足し、ダイから
吐出された樹脂表面が十分に平滑化されない場合があります。
一方で温度を上げすぎると、
- 樹脂の熱劣化
- 添加剤の揮発
- ガス発生
- 表面欠陥
等に繋がる可能性があります。
その為、樹脂が十分に溶融・混練され、なおかつ熱劣化
を起こさない温度範囲を設定する事が重要です。
■ダイリップの状態が表面粗さに与える影響
〇フィルム表面の品質を左右する重要なポイントの一つが
Tダイのダイリップ状態です。
ダイリップに、
- 樹脂の付着
- 焼け
- 異物
- キズ
- 摩耗
- 汚れ
等があると、フィルム表面にその状態が転写される
事があります。
特に微細なキズや汚れは、フィルムの流れ方向に連続した
スジ状欠陥として現れる事があります。
その為、表面粗さを管理する場合には、フィルムだけでなく
ダイリップの状態も定期的に確認する事が重要です。
■ロール温度・冷却条件
〇Tダイから吐出された溶融樹脂は、冷却ロールなどによって
冷却・固化されます。
この時、冷却条件が変化するとフィルム表面の状態も
変化します。
例えば、
- 冷却ロール温度
- ロール表面状態
- ロールへの密着状態
- エアギャップ
- 冷却速度
- フィルムとロールの接触状態
等が影響します。
特にキャストフィルムでは、冷却ロール表面の状態が
フィルム表面に反映される場合があります。
ロール表面に傷や汚れがある場合、それがフィルム表面へ
転写される可能性もあります。
■樹脂の結晶化と表面粗さ
〇結晶性樹脂では、結晶化挙動も表面状態に大きく影響します。
PPやPE 等では、冷却条件によって結晶化状態が変化します。
冷却速度や温度条件が変わると、
- 結晶サイズ
- 結晶化度
- 収縮
- 透明性
- 光沢
- 表面状態
等が変化する可能性があります。
その為、表面粗さだけを単独で見るのではなく、
【表面粗さ+透明性+光沢+結晶化状態】
というように、複数の評価項目を組み合わせて管理すると
より正確に原因を把握できます。
■添加剤・フィラーによる表面粗さへの影響
〇コンパウンドされた樹脂をフィルム成形する場合
添加剤やフィラーも重要な要因になります。
例えば、
- CaCO₃
- タルク
- シリカ
- ガラス繊維
- 難燃剤
- 滑剤
- アンチブロッキング剤
等です。
フィラーの粒径や分散状態が悪い場合、フィルム表面に
微細な突起が発生する可能性があります。
特にフィラーを高充填したフィルムでは、
【フィラーの粒径】
【分散状態】
【樹脂との界面】
【フィラー凝集】
が表面に大きく影響します。
その為、表面粗さが悪化した場合にも、成形条件だけでなく
コンパウンド状態まで遡って確認する事が重要です。
■フィルム表面粗さの測定方法
〇表面粗さは、専用の測定機器を使用して数値化出来ます。
代表的な方法として、
【接触式表面粗さ測定】
〇測定子をフィルム表面に接触させ、その高さ方向の変化を
測定します。
メリットは、表面粗さを数値として評価しやすいことです。
一方、柔らかいフィルムでは、測定子によっては表面が
変形する場合がある為、測定条件の設定には注意が必要です。
【非接触式測定】
〇レーザーや光学式の測定機器を使用して、フィルム表面の
凹凸を測定する方法です。
フィルムを傷つけずに測定できるため、柔らかいフィルムや
微細な表面状態の評価にも適しています。
■【どこを測定するか】も重要
〇フィルム表面粗さを管理する時、測定値だけを見るのは危険です。
例えばフィルム幅方向について、
左・中央・右
の3カ所を測定するだけでも、表面状態の偏りを確認できます。
さらに、
- MD方向(流れ方向)
- TD方向(幅方向)
を意識して測定すると、表面状態の異常をより詳細に把握できます。
例えば中央だけ粗い、端部だけ粗い、MD方向に周期的な凹凸がある
等、発生パターンから原因を推測できるケースがあります。
■表面粗さが悪化した場合のチェックポイント
〇表面粗さが規格から外れた場合は、次の項目を
順番に確認すると効率的です。
チェック① 原料
- 樹脂グレードは正しいか
- 異物が混入していないか
- フィラーが凝集していないか
- 添加剤量は適正か
- 原料の乾燥状態は問題ないか
チェック② 押出条件
- シリンダー温度
- ダイ温度
- スクリュー回転数
- 吐出量
- 滞留時間
- 混錬状態
チェック③ ダイ
- ダイリップの汚れ
- 樹脂の付着
- キズ
- 摩耗
- ダイ内部の滞留物
チェック④ 冷却
- 冷却ロール温度
- ロール表面状態
- ロールへの密着
- 冷却速度
- エアギャップ
チェック⑤ 測定
- 測定位置
- 測定方向
- 測定距離
- 測定荷重
- 測定機器
- 測定条件
このように、【原料→押出→ダイ→冷却→測定】の順番で
確認すると原因を整理しやすくなります。
■表面粗さを安定させるための管理
〇表面粗さを安定させる為には、単純に成形温度を調整する
だけでは不十分です。
重要なのは、成形条件を固定して再現性を高める事です。
例えば、
- 原料ロットを記録する
- 樹脂乾燥条件を記録する
- 成形温度を記録する
- スクリュー買い手¥数を記録する
- 吐出量を記録する
- 冷却ロール温度を記録する
- フィルム厚みを記録する
- 表面粗さ絵を定期的に測定する
といった管理を行います。
特に試作では、【表面粗さ〇μmだった】だけでなく
【どの条件で〇μmだったのか】まで記録する事が非常に重要です。
■表面粗さとフィルムの機能性
〇表面粗さは単なる外観評価ではありません。
フィルムの用途によっては、表面粗さが機能そのものに
影響します。
例えば包装フィルムでは、
- 滑り性
- ブロッキング性
- 開封性
- 印刷性
- 光沢
- 透明性
等に関係します。
また、接着やラミネート用途では、表面状態が接着性や
濡れ性に影響する可能性があります。
つまり、表面粗さ管理は、
【見た目をきれいにするため】だけでなく、
【フィルムを狙った性能にするため】の重要な管理項目です。
■まとめ
〇フィルム成形における表面粗さは、フィルムの外観だけでなく
透明性・光沢・滑り性・ブロッキング性・印刷性・接着性 等
様々な性能に影響する重要な品質特性です。
表面粗さが安定しない場合には
原料→混練→押出条件→ダイ→冷却→測定方法
という一連の流れを確認する事が重要です。
特にフィラーを含むコンパウンドフィルムでは、フィラーの
分散状態や凝集が表面状態に影響する事もあります。
また、表面粗さは測定位置や測定方向によって数値が変わる
可能性がある為、測定方法そのものを標準化する事も重要です。
【表面がザラつく】【光沢が出ない】【フィルムの滑り性が安定しない】
といった問題が発生した場合、単純に成形温度を変更するのではなく
工程全体から原因を探る事が改善への近道です。
フィルムの表面品質を安定させる為には、感覚的な
【きれい・粗い】だけでなく、表面粗さを数値化し
成形条件と紐づけて管理する事が重要です。
