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樹脂とフィラーの相溶性とは?シリカ・ガラス繊維・BNを例に界面接着と分散性を解説

樹脂コンパウンドエンジニアリングプラスチック汎用樹脂

〇樹脂コンパウンドでは、樹脂に無機フィラーや繊維などを
 添加する事で、強度・剛性・耐熱性・熱伝導性・寸法安定性
 ・難燃性 等、様々な性能を付与できます。

 一方で、フィラーを添加すれば必ず性能が向上するわけではありません。

 特に重要なのが、【樹脂とフィラーの相溶性】です。

 例えば、シリカ・ガラス繊維・窒化ホウ素(BN) 等は
 それぞれの表面状態や粒子形状、濡れ性が異なります。

 その為、同じ樹脂に添加しても分散状態や界面接着性によって
 コンパウンド後の物性が大きく変わる事があります。

 また、樹脂とフィラーの場合、樹脂同士を混ぜる時の【相溶性】と
 まったく同じ意味で考えるのではなく、樹脂とフィラーの【濡れ性】
 【界面接着】【分散性】を含めて考える事が重要です。

 本記事では、シリカ・ガラス繊維・BNを例に、樹脂とフィラーの
 相溶性について、二軸混練によるコンパウンドの視点から詳しく解説します。

■樹脂とフィラーの【相溶性】とは?

〇一般的に【相溶性】とは、異なる材料同士が混ざり合い
 安定した状態を形成できる性質を指します。

 しかし、樹脂とフィラーの組み合わせでは、フィラーは樹脂のように
 溶融して均一な相になるわけではありません。

 その為、樹脂コンパウンドでは、

  • 樹脂がフィラー表面をどれだけ濡らすか
  • フィラーが樹脂中にどれだけ均一に分散するか
  • 樹脂とフィラーの界面でどれだけ接着するか
  • フィラー同士が凝集しないか

 といった要素を総合的にみる必要があります。

 つまり、実務上は、
 【樹脂とフィラーの相溶性】=【樹脂とフィラーの界面適合性+濡れ性+分散性+接着性】
 として考えると理解しやすくなります。

■相溶性が悪いと何が起こる?

〇樹脂とフィラーの界面状態が悪い場合、せっかく高性能な
 フィラーを添加しても、期待した性能が得られない事があります。

 代表的な問題が以下です。

①フィラーが凝集する

〇フィラー同士が強く引き合う事で、樹脂中で粒子が集まり
 大きな凝集体を形成する事があります。

 凝集が発生すると、

 樹脂中にフィラーが均一に分散しない
 ↓
 局所的にフィラー濃度が高くなる
 ↓
 強度・外観・加工性 等に悪影響

 という問題に繋がります。

②界面で剥離する

〇樹脂とフィラーの接着性が低い場合、外部から力が加わった際に
 樹脂とフィラーの界面から剥離する事があります。

 特に機械的強度を目的として、ガラス繊維などを添加する場合
 樹脂とガラス繊維の界面接着性は非常に重要です。

 フィラーそのものが高強度でも、樹脂との界面で力を十分に
 伝達できなければ、材料全体として期待した補強効果を
 得にくくなります。

③外観不良が発生する

〇フィラーの分散不良は、外観にも影響します。

 例えば、

  • ブツ
  • 白化
  • 粒状物
  • フィッシュアイ
  • 表面荒れ
  • 光沢ムラ

 等に繋がる可能性があります。

 特にフィルムやシートでは、微小な凝集物でも表面欠陥として
 荒っわれる事があります。

④成形加工性が悪化する

〇フィラーを大量に添加すると、樹脂の流動性が低下する事があります。

 さらにフィラーが凝集すると、二軸押出機の中で
 【供給不安定→トルク上昇→圧力上昇→吐出不安定】
 といった問題に繋がる場合があります。

 その為、フィラーコンパウンドでは【混ざるか】だけでなく
 安定して押し出せるかという視点も重要です。

■シリカと樹脂の相溶性

〇シリカは、樹脂コンパウンドで使用される代表的な
 無機フィラーの1つです。

 シリカには、

  • 補強
  • 剛性向上
  • 寸法安定性
  • 表面特性の調整
  • 低収縮化

 等を目的として使用されるケースがあります。

 しかし、シリカ表面にはシラノール基(si-OH)が存在する為
 樹脂の種類によっては樹脂との親和性が十分でない場合もあります。

 その結果、シリカ同士が凝集しやすくなる事もあります。

・シリカで重要になるポイント

〇シリカコンパウンドでは

 シリカ表面の性質
 ↓
 樹脂との濡れ性
 ↓
 フィラー同士の凝集
 ↓
 分散条件

 を考える必要があります。

 場合によっては、シリカ表面を処理した表面処理シリカや
 適切な添加剤・相溶化剤 等を利用する事で、樹脂との
 界面状態を改善できる可能性があります。

■ガラス繊維と樹脂の相溶性

〇ガラス繊維は、樹脂の強度・剛性・寸法安定性 等を
 向上させる目的で広く使用されています。

 例えば、

  • PA+GF
  • PP+GF
  • PBT+GF
  • PPS+GF

 等は代表的な組み合わせです。

 ガラス繊維の場合、単純に【ガラス繊維を樹脂に均一に混ぜる】
 だけでは十分ではありません。

 重要なのは、樹脂とガラス繊維の界面で、どれだけ応力を
 伝達できるかです。

・ガラス繊維では【界面接着】が重要

〇ガラス繊維は非常に高い強度・剛性を持っています。

 しかし、【樹脂→ガラス繊維】へ荷重がうまく伝わらなければ
 ガラス繊維による補強効果を十分に発揮できません。

 その為、ガラス繊維には表面処理剤やサイジング剤が
 使用されることがあります。

 樹脂との相溶を考慮した表面処理によって、樹脂とガラス繊維の
 界面接着性を高める事が重要です。

■BN(窒化ホウ素)と樹脂の相溶性

〇BN(窒化ホウ素)は熱伝導性を付与するフィラーとして
 注目されている材料です。

 特に、電気絶縁性を維持しながら熱伝導性を高めたい
 用途では、BNが選択肢となります。

 例えば、

  • 電子部品
  • 放熱材料
  • 熱伝導性樹脂
  • 絶縁性放熱材料

 等で利用が検討されています。

・BNでは【分散】と【フィラー同士のネットワーク】が重要

〇BNを大量に添加する場合、単純な相溶性だけでなく
 BN粒子が樹脂中でどのようなネットワークを成形するか
 も重要になります。

 熱伝導性を高めるには、BN同士が適切に繋がる事で
 樹脂中に熱の通り道を形成する事が重要です。

 一方で、BNが凝集してしまうと、

  • 大きな凝集物
  • 成形不良
  • 表面結果
  • 流動性低下

 等の問題に繋がる可能性があります。

 つまりBNコンパウンドでは、
 【均一に分散させる事】と【熱伝導経路を形成する事】
 のバランスが重要になります。

■相溶性と分散性は同じではない

〇ここは樹脂コンパウンドで非常に重要なポイントです。

 【相溶性と分散性は同じ意味ではありません】

 例えば、フィラーの樹脂中に細かく分散しているように見えても
 樹脂とフィラーの界面接着性が低ければ、期待した物性が
 得られない事があります。

 逆に、樹脂との親和性が高くても、混練条件が適切でなければ
 フィラーが十分に分散しない事があります。

 従って、
 相溶性=樹脂とフィラーが界面で適合するか
 分散性=フィラーが樹脂中に均一に分布するか

 という違いを理解する事が重要です。

■二軸混練では何を調整する?

〇樹脂とフィラーのコンパウンドでは、材料の組み合わせ
 だけでなく、二軸押出機の条件設定も重要です。

 代表的な調整項目としては、

  • 樹脂温度
  • シリンダー温度
  • スクリュー回転数
  • フィラーー供給位置
  • フィード量
  • スクリュー構成
  • 混練時間
  • 吐出量

 等があります。

 特にフィラー高充填では、単純に回転数を上げれば分散が
 良くなるとは限りません。

 せん断を強くすると分散が改善する場合がある一方で
 材料によっては、

 発熱    → 熱劣化
 繊維破断  → 補強効果低下
 トルク上昇 → 安定運転困難

 等に繋がる可能性があります。

 その為、目的と材料に応じて条件っを調整する必要があります。

■フィラーの種類によって【相溶性】の考え方は変わる

フィラー主な目的特に重要なポイント
シリカ補強・剛性・寸法安定性 等 濡れ性・凝集・分散
ガラス繊維強度・剛性向上界面接着
繊維長
BN熱伝導性付与分散
熱伝導ネットワーク
アルミナ熱伝導・絶縁・高充填濡れ性
高充填時の流動性
炭酸カルシウム剛性・コスト調整 等分散
凝集
タルク剛性・寸法安定性粒子分散
配向

〇このように、フィラーによって求められる性能や問題点は異なります。

■相溶性を改善する代表的な方法

〇樹脂とフィラーの界面状態を改善する方法として、
 以下のような手法があります。

①フィラー表面処理

〇フィラー表面を処理する事で、樹脂との親和性を高める方法です。

 シリカやガラス繊維などでは、表面処理による界面制御が
 重要になる場合があります。

②相溶化剤・カップリング剤の利用

〇樹脂とフィラーの間をつなぐ役割を持つ添加剤を使用する方法です。

 特に、樹脂と無機フィラーの界面接着性を改善する目的で
 検討されます。

③フィラー粒径の最適化

〇粒径が小さくなる程、表面積が大きくなるため、樹脂との界面面積も
 増加します。

 ただし、微粒子化すれば必ず良いわけではなく、凝集しやすくなる
 場合もあります。

④二軸混練条件の最適化

〇スクリュー構成、温度、回転数、供給量 等を調整し
 フィラーを適切に分散させます。

■【高充填=高性能】ではない

〇フィラーコンパウンドでは、フィラーの配合量を増やすことで
 性能が向上するケースがあります。

 しかし、一定量を超えると、

 フィラー増加
 ↓
 粘度上昇
 ↓
 分散性低下
 ↓
 凝集・吐出量不安定
 ↓
 物性・外観悪化

 という事も起こり得ます。

 その為、重要なのは単純な【最大充填量】ではなく
 【目的性能を満たしながら、安定して加工できる配合】
 を見つける事です。

 これは実勢のコンパウンド試作において非常に重要な考え方です。

■まとめ

〇樹脂とフィラーの【相溶性】は、樹脂同士を混ぜる場合の
 相溶性とは少し意味が異なります。

 実際の樹脂コンパウンドでは、
 【濡れ性・界面接着性・分散性・凝集性】
 等を総合的に考える事が重要です。

 シリカでは凝集と分散、ガラス繊維では界面接着と繊維長
 BNでは分散と熱伝導ネットワークが特に重要なポイントになります。

 さらに、フィラーの種類や配合量だけでなく、
 二軸押出機の温度・回転数・スクリュー構成・供給位置・吐出量
 等によっても結果は大きく変わります。

 その為、樹脂とフィラーのコンパウンドでは、
 単純に【混ぜる】のではなく、
 【樹脂とフィラーの界面を設計し、適切な混練条件で分散させる】
 という考え方が重要です。